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坂田 一郎東京大学 政策ビジョン研究センター センター長 坂田 一郎

 成年後見制度は、2000年に介護保険制度とともにスタートしましたが、これまで成年後見の利用実績は非常に低調に推移してきました。背景には、後見制度の認知度の低さ、家庭裁判所に申し立てるという敷居の高さ、手続きの煩雑さや費用の問題、後見人の成り手不足、その他が挙げられます。
 しかし、成年後見制度を普及・定着させていくことは、判断能力の低下した高齢者を狙う悪質商法の抑止のみならず、高齢化の進展とともに増大する認知症高齢者等に対して、医療・介護・福祉等のサービスを適切に提供し、その生活の安心・安全を確保することに資するものと考えられます。

 このような状況の中、成年後見制度をより一層啓発・普及させ、市民の身近なものにすることを目指して、本学において、平成20年度に市民後見人養成講座が開講されました。それ以後、全国からの約2300名の受講生に対し、市民後見人としての素養を認める履修証明書(学校教育法に基づく証明書)を交付してまいりました。

 そして、この市民後見人養成講座を引き続き開催・運営するとともに、高齢社会における諸問題、特に成年後見に関する調査・研究を幅広く行うため、平成24年度に、東京大学の学際的・領域横断的機構である政策ビジョン研究センターに、「市民後見研究実証プロジェクト」が設置されました。
 本プロジェクトでは、市民後見人となるべき人材を養成する教育活動を継続していくとともに、成年後見を切り口として、単身世帯が増加している認知症等の高齢者や障がい者等が抱える諸問題を抽出・分析し、医療・介護・福祉・住宅・金融といった関連サービスや制度のあり方に関する多面的な研究を行い、政策提言等を行っていくことを目的としています。具体的には、認知症高齢者等の財産管理や身上監護のあり方、成年後見のニーズ調査、後見業務の第三者評価、市民後見人養成のあり方などに関する実証研究を進める一方で、成年後見に関連する制度や法律、施策などについて政策提言等を行うことを目指します。

 政策ビジョン研究センターは、さまざまな分野の研究の現場と社会をつなぐ橋渡しをすべく、民間の方々とも連携しながら、新しい政策の選択肢の提示を目指しております。同時に、本プロジェクトにおいては、従前の活動を新しい形で継続し、市民後見人のさらなる活用が求められている社会的要請に応えるために、市民後見人養成講座を開催してまいります。このような活動を通して、社会のニーズに応えるとともに、地域的な連携とネットワークを構築することを通して、より実行力のある政策の選択肢を提示できると考えています。

 上記の活動を推進していくために、多くの方々の御参加と御協力を賜りますと幸甚に存じます。