ご挨拶

城山 英明東京大学 政策ビジョン研究センター センター長 城山 英明

成年後見制度は、2000年に、介護保険制度とともにスタートしました。しかし、これまで、成年後見の利用実績は極めて低調に推移してきました。背景には、認知度の低さ、家庭裁判所関与ゆえの敷居の高さ、費用や手続きの煩雑さ不透明さ、後見人の成り手不足、その他が挙げられます。しかし、成年後見制度を普及・定着させることは、高齢者を狙う悪質商法の抑止のみならず、高齢社会における医療・介護・住宅・金融・その他の適切な提供の確保にも資するものと考えられます。

これまで、東京大学大学院医学系研究科においては、平成20年度から文部科学省“社会人の学び直し”委託事業として、成年後見を市民の身近なものにすることを目指し128時間の市民後見人養成講座を開設し、全国27の都道府県から受講した1,400人の中高年層のうち、811名に対し、市民後見人としての素養を認める履修証明書(学校教育法105条)を付与して来ました。

このようなこれまでの医学系研究科における活動を基礎として、成年後見や高齢者向け政策に関する応用研究を幅広く行うべく、東京大学の学部等横断的機構である政策ビジョン研究センターに“市民後見研究実証プロジェクト”を設置することになりました。本プロジェクトでは、現場における人材養成を継続するとともに、成年後見を通じ、増加する一人暮らし高齢者や認知症高齢者、障がい者等が抱える諸問題を抽出・分析し、医療・介護・福祉・住宅・金融といった関連サービスや制度の在り方に関する多面的政策研究を行い提言していくことを目的としています。具体的には、認知症高齢者等の情報管理、成年後見の在り方・見える化、事理弁識能力の判定方法、法定後見のニーズ調査、成年後見の業務評価等についての臨床研究を進める一方で、成年後見制度関連四法を軸に民法、社会保障、事業関連法などについて政策提言を目指します。

政策ビジョン研究センターは、様々な分野の研究の現場と社会をつなぐ橋渡しをするべく、民間の方々とも連携しながら、新しい政策の選択肢の提示を目指しております。同時に、本プロジェクトにおいては、従前の活動を新しい形で継続すべく、市民後見人養成講座を今年度は全国4ヵ所で開催して参ります。このような活動を通して現場のニーズにこたえるとともに、現場のネットワークを構築することを通して、より現実感のある政策選択肢が提示できると考えています。数多くの方々の積極的な御参加と御協力を期待しています。